南会津 黒岩山(1438m)、苛窪山(1402m)、大平山(1543m)、丸山(1552m)、三角山(1258m) 2015年3月28日  カウント:画像読み出し不能

所要時間 6:09 ゴルフ場−−6:23 林道入口−−7:18 斜面取付−−8:50 黒岩山(休憩) 9:35−−10:10 1440m峰−−10:25 谷−−10:46 1340m鞍部−−10:57 苛窪山(休憩) 11:52−−13:00 1528m峰−−13:18 1540m峰−−13:29 太平山(休憩) 14:17−−14:44 1602m峰−−15:14 1638m峰−−15:36 丸山(休憩) 16:11−−16:49 沼の平−−17:11 三角山−−17:22 中山峠−−19:01 車道に出る−−19:28 除雪終点−−19:40 車道に出る−−20:12 除雪終点−−20:42 林道−−20:46 ゴルフ場

場所福島県見南会津郡南会津町(旧舘岩村/田島町)
年月日2015年3月28日 日帰り
天候
山行種類残雪
交通手段マイカー
駐車場ゴルフ場入口に駐車
登山道の有無残雪で不明だがたぶん無し
籔の有無残雪で不明だが地域的、標高的には黒岩山〜1638m峰は激籔が予想される
危険個所の有無丸山の下りが急斜面
山頂の展望三角山を除き残雪期はどこも展望良好
GPSトラックログ
(GPX形式)
ここをクリックしてダウンロード
コメント会津高原たかつえCCからCW方向に周回。ロングコースで明るいうちに帰るのは困難。黒岩山への登りは雪が締まって快適だったが、稜線に乗って以降はスノーシューが活躍した。全体的にブナ林に覆われて明るい尾根が続く。丸山の下りでスノーシューが破損、地形図を落としてしまい、中山峠からの林道歩き以降を地図なしで歩くことになり迷いまくった。最後は電池切れのGPSを間欠的に使ってやっと車に戻れた


ルート図。クリックで等倍表示


営業前のゴルフ場から出発 スノーシューにピッケル
路面はツルツルに凍結。歩きにくい 道路から逃げて雪原を歩く。締まりがいい雪
これが地形図の太い車道 保城川に架かる橋。積雪量がわかる
保城川沿いの林道入口。スノーモービル跡あり 標高1030m付近で橋を渡り斜面へ
緩い地形で読図が難しい 木の根元で腰まではまってしまった
小さな谷を横断し西側の尾根に乗る。目的の尾根だと思ったのだが 快適な雪質でスノーシューの出番なし
燧ヶ岳 カモシカの足跡を追って登る
1180m峰から下る。ここでルートミス発覚 唐松植林斜面を左へトラバース
谷を横断して正しい尾根へ這い上がる 尾根上に出た
標高1300m付近。傾斜がきついがアイゼン不要だった 東側には本日のコースが。丸山まで届くか?
振り返ると栃木県境の山々 町村界稜線に乗ると雪庇が登場
つぼ足で潜るようになりスノーシューへ 黒岩山山頂(西峰 1438m)
黒岩山から見た東側 黒岩山から見た飯豊連峰
黒岩山から見た東〜南の展望(クリックで拡大)
黒岩山を出発 黒岩山東側直下は雪庇だった
東へ向かう 黒岩山東峰(1430m)
北東へ進む 1440m峰西側で真新しいワカン跡登場
1440m峰 1440m峰から苛窪山向けて北東尾根を下った
軟雪でも下りは楽勝 歩きやすい尾根が続く
カモシカが寝そべっていた場所 尾根末端付近
保城沢の谷に出た 最初は植林
小尾根を登る。軟雪の登りは疲れる 自分のスノーシュー跡がくっきり
1340m鞍部 苛窪山への尾根は東側が切れ落ちている
尾根東側は背の低い樹林だが籔はないらしい このピークが苛窪山山頂
苛窪山山頂。今は雪庇が最高点 本当の苛窪山山頂
苛窪山から見た北〜東の展望(クリックで拡大)
苛窪山から見た那須連峰 苛窪山から見た那須北部
こんな感じで雪庇がせり出している トンビじゃないよな
大平山向けて南下 黒岩山方面
1340m鞍部から登りにかかる ヤドリギ。この辺りはたくさん見られた
この尾根は木が少なく開けた場所が多い 会津磐梯山。先週より白くなったような?
福島/新潟県境の山々(クリックで拡大)
雪庇の縁にカモシカの足跡あり アスナロの大木。太さの割に背が低い
照葉樹が何故か多い カモシカの足跡
振り返る これもカモシカの足跡。まるで人間のよう
北方向の展望。登りたい山が目白押し(クリックで拡大)
アスナロの枯れ木。各断面から伐採されたことが分かる 1518.2m三角点峰。登らず東を巻いた
ワカン跡と合流 以降はワカン跡をトレース
カモシカ足跡も合流。カモシカもラッセルは嫌いらしい 1528m峰から見た大平山
熊棚 広い尾根を登る
1528m東縁の雪庇切れ目から降りた足跡 大平山西側の1540m峰
さらに東へ 大平山山頂。平坦で山頂らしくない
大平山から見た南側 1602m峰へと下る
大平山を振り返る 1490m鞍部
1490m鞍部から南側の展望。丸山が大部近くなった
1602m峰への登り 1602m峰から見た1638m峰
1602m峰東斜面。スキーなら楽しそう 1480m鞍部から1638m峰を見上げる
こんな雪の残り方は珍しい 1480m鞍部の幕営跡。ワカンの主だろう
1638m峰への登り 1602m峰
1638m峰への登り 1638m峰への登り
1602m峰を振り返る 1638m峰。リフト山頂駅あり
1638m峰から見た東〜南の展望(クリックで拡大)
1638m峰から見た七ヶ岳 1638m峰南側の電波塔
丸山の途中から振り返る 雪庇の発達した尾根を丸山へと向かう
明らかな夏道あり。でも丸山まで続いているかは不明 丸山への登り
丸山山頂は雪庇に覆われる 丸山から見た男鹿山塊
丸山から見た360度展望写真(クリックで拡大)
丸山から見た高原山 月を撮影してみたら意外によく撮れていた
雪庇の陰で最後の休憩 ザックカバー紛失に気付いたが無事発見
丸山付近から見た茶臼岳 ワカンの主はこの先はアイゼンだった
アイゼン跡 丸山南肩から南を見る
この下は絶壁に近く尾根は下れない 右へ脱げる。ここでスノーシューを脱ぐ
沼ノ平が見える できるだけ傾斜が緩い場所を選んで下る
傾斜がきつすぎて雪が消えている 振り返る。写真では分からないが猛烈な傾斜
東へトラバース。ここでスノーシューに違和感発生 尾根に戻る。地形図紛失が発覚
南東に下り、適当に南へ進路変更 平坦な樹林。視界が無いとヤバそうな場所
突如として立派な小屋が登場 ワカン跡に再会
熊棚 熊の木登りの爪痕。ブナの幹は滑らかで分かりやすい
沼の平。今は木の無い雪原 三角山へ向かう
左側のスノーシュー破損に気づく 三角山手前でワカン跡は右へ巻いてしまう
尾根上は雪なし でも籔も無い
三角山山頂 蝉山で見たのと同じ人のものだろう
林道まで片足スノーシューで 沈み方の差
林道から三角山まで意外に籔は薄いらしい 目印
中山峠で林道へ スノーモービル跡で雪が締まって歩きやすい
夕暮れ 真っ暗な時間帯に林道から車道へ
地形図が無く迷いに迷って出た道路で勘違い ゴルフ場まで続く予定が除雪終点!
今度こそ間違いなく往路で通った道だ! やっと車に到着。下界で疲れた山行は初めて


 七ヶ岳付近にはいくつかのピークがあるが、あの地域であの標高なので登山道が無ければ七ヶ岳山頂周辺のように激藪は確実。登るなら雪がある時期しかない。今回はたかつえスキー場付近をスタート地点にして、西の端の黒岩山から東側へ攻めて体力、時間の許容範囲で登れるところまで登ろうと考えた。ただし、大平山付近からリフト山頂駅のある1636m峰や丸山付近までスキー場側に面した斜面の傾斜がきつく、下れる場所は限定されるだろう。安全策はスキー場のゲレンデを歩くことだが、できればこれは避けたい。ゲレンデがあるくらいだからその周囲は歩いて下っても危険が無い程度の傾斜だろう。一番遠いコースは三角山を登って中山峠から林道で下るルートで、たぶんここを歩いたら明るいうちに戻れないだろう。それに丸山から三角山に下る尾根の傾斜は猛烈で、雪が乗った時期に下れるのか自信は無かった。そのため、三角山から反時計回りはやめて黒岩山から時計回りとした。

 朝の気温が低い時間帯に距離を稼ぐために保城川沿いの林道近くまで車でアプローチしたいが、どこまで除雪されているのか不明だ。雪の多いあの場所でこの時期にゴルフ場が営業しているとは考えにくいが、何らかのメンテのために建物までは除雪されている可能性はある。

 軽い事前調査のためヤマレコで赤線があるか確認したが無かった。記録があろうが無かろうが地形図を見て自分でルートを決めるので関係ないが。ネットで検索すればおそらく山スキーの記録が見つかると思っていたが、帰宅後の検索ではスキー場から黒岩山への縦走は1件だけしか見つからなかった。しかも山スキーではなかった。予想以上に登られていないらしい。

 今回は西那須野塩原ICで降りて山王トンネルを抜けて南会津へ入った。たかつえスキー場入口を通過してゴルフ場の案内看板を見て左折したが、このときはここが三叉路とは気付かなかったことが帰りで致命的なミスにつながるとは思いもしなかった。

 路上には雪が残るが1車線の幅で除雪が続く。両側の雪壁の高さは2m弱。別の道路に合流するがカーナビの画面上で右と判断。次の合流で広い道に出て左。ここがゴルフ場へと続く広い道らしい。除雪されていて助かった。そのまま進むとゴルフ場入口から先も除雪は続くが道幅が狭く両側から崩れた雪が路上に落ちていて、日中に気温が上がると閉じ込められかねないと判断し、ゴルフ場入口まで戻って仮眠した。路面は日中溶けた雪の水が氷の膜となって覆っていて非常に滑りやすかった。

 翌朝は快晴。気温は下がって窓ガラスの水滴はカチカチに凍っていた。この方が雪が締まっている可能性が高く有難い。朝飯を食って出発。今日は急斜面の下りが予想されるためスノーシューの他に12本爪アイゼンにピッケル、お助けロープを持つ。帰りの時刻が遅くなるかもしれないので水と食料は多めに持った。

 出発後、最初は除雪された舗装道路を歩いたが薄い氷の膜が張ってツルツル滑って歩きにくいので雪原の上に逃げる。平坦なゴルフコースで日当たりがいい影響かつぼ足でも沈まず快適だ。これなら今回はスノーシューの出番は無いかもしれない。コースは雪に覆われているが雪解けを促進する黒い粉が撒かれていて、営業開始に向けて準備を進めているようだ。

 地形図の車道を辿って西に進んでもいいが標高を損することになるので北に進路をとることにした。するとスノーモービル跡が登場、ここは地形図に記載されていない林道だと考えたが、保城川を渡る橋があまりにも立派なことでここが地形図に描かれた太い道だと判明した。車を置いた場所から別に続く道だったのだ。

 橋を渡った右岸側には川沿いに伸びる林道入口があり、スノーモービル跡が続いていた。スノーモービルの重みで圧雪されているため周囲よりも歩きやすくて助かった。開けたゴルフ場と違って林道周囲は樹林なので日当たりが若干悪く雪の締まりも悪くなる。スノーモービルのトレースを外すと足首くらいまで潜った。

 しばしスノーモービルのトレースを辿って緩やかに高度を上げる。地形図よりも林道は奥に伸びており、標高1040m付近で立派な橋で右岸側に渡り返す場所があったが、私の計画でも右岸側に渡る必要があるので利用させてもらう。もっとも、ここまで登ると既に流れは雪の下でどこでも自由に渡れる状態だった。この先はブナが中心の開けた尾根になりそうなので、ここで顔と首に日焼け止めを塗った。今日は天気は良好、風も穏やかで予報では下界の気温も上がるという。Tシャツでの行動が長くなりそうなので首回りにも日焼け止めを塗らないと痛い目にあうだろう。

 この付近の地形は傾斜が緩やかで読図が難しい。あまり東寄りの尾根を登ると黒岩山東側の1430m峰南側の絶壁に出てしまうため、西寄りに進路を取るのがコツだが、気を付けていたにもかかわらず尾根を1本間違えて1180m峰のある尾根に入ってしまった。1180m峰は小さなピークだが登り一辺倒から下りがでてくるので場所の判断がしやすいが、このときは地形図の緩やかな尾根のどこかだろうと安易な判断をしてしまった。人間は自分に都合のいい解釈をしがちだといういい例だろう。すぐ右手(東側)に別の尾根が見えているのも判断を狂わせる要因だった。

 しかしこの先の進路を見ると、右手に見えている尾根に吸い込まれている。これはおかしい。落葉したブナを通して西側には登りやすそうな尾根が見えていたので、あれが計画していた尾根だとやっと気付いた。幸い、そちらの尾根にトラバースする斜面は傾斜は緩やかで尾根を乗り換えるのに問題なさそうだ。

 カラマツ植林の斜面を横断し、雪に埋もれた小さな谷を越えて急登すると目的の尾根に乗った。あとは上を目指すのみ。相変わらず雪の状態は最高でつぼ足でほとんど沈まない。背の高いブナが点在する明るい尾根で先の様子も良く見える。

 グングン高度を上げて標高1300m付近で傾斜がきつくなるが、アイゼンを必要とするほどではなくキックステップで通過。懸案事項の一つをクリアした。

 標高1360mに達すると黒岩山南西尾根に乗る。それと同時に雪質が変化、これまで快適な締まった雪だったのが締まりのない新雪に。足首まで潜るようになったのでスノーシュー装着。持ってきてよかった。まだ残雪期として早い時期なので、どこでも雪が締まっているわけではないようだ。

 尾根には階段状の雪庇が発達、細かなアップダウンを繰り返しながら登っていく。やがて傾斜が緩んでピークに到着、そこが地形図上の1438m峰の黒岩山山頂だった。地形図では黒岩山は標高点のある西峰と、標高点がない1430mの東峰に分かれているが、どちらが標高が高いのかは微妙だ。1438m峰から1430m峰を見てもほぼ同じに見える。念のため両方を踏んでおけば後顧の憂いも無かろう。1438m峰には標識、目印等の人工物は無かった。今の最高点は雪庇の上で見晴らしがいい。南は奥日光、北は飯豊まで見えた。ここから見ると男鹿山塊は那須と並んで東の方に見える。この天気だと大佐飛山は賑わっているだろう。

 山頂北側で休憩。今日はロングコースになるかもしれないので休憩は長めに取っておく。日が高くなると日差しが暑いくらいだ。今日は飲み物を1リットル持ってきたが間に合うか心配になる。冬の間はほとんど水分は飲まないが、この暑さだとそうもいかないだろう。

 休憩を終えて出発、黒岩山東峰へと向かう。西峰の東直下はちょっとばかり雪庇になっていて、その切れ目から下った。お隣の東峰はだらっとした広い山頂部で、ここにも山頂標識や目印は見られなかった。

 ガスられたらやっかいそうな緩斜面を進んで1440m峰へ登り始めると真新しいワカン跡が登場。方向は私とは逆に東から西へと向かっていた。これならすれ違いそうなものだが、この一帯は尾根の形状を成しておらず緩斜面なので進む場所がお互いに離れてしまったようだ。この時刻にこの場所を通過するには、私のように保城川沿いから上がってくるか、まだ暗いうちから歩き始めないと無理だろう。少なくとも今朝スキー場から出発したのではないと思う。これは以降の足跡の付き方で判断できるだろう。しかし、こんなマイナールートを歩く人に会えなかったとは残念だ。結局、足跡は中山峠まで続いていて幕営縦走だった。昨日も好天だったはずで、思いっきり楽しめただろう。

 1440m峰からは保城峠には向かわず、ショートカットで北東尾根を下った。これは次の目的地が苛窪山だからで、通常は保城峠に下って1518.2m三角点峰に登り返し、北尾根に入って1340m鞍部まで下ってから苛窪山へさらに登り返すところだろうが、これでは距離、標高差とも非効率的。そこで1440m峰北東尾根を下って谷に下りて1340m鞍部に登り返して苛窪山を踏むプランだ。もちろんこんなことは残雪期だからできることだろう。

 北西尾根は太く明瞭な尾根で傾斜も適度、スノーシューで快適に下っていく。ただし北向きの尾根なので稜線上よりさらに雪が柔らかく沈み方が大きい。途中で雪の上に寝そべったカモシカを発見したが、写真撮影する前に逃げられてしまった。ここまでの間に無数のカモシカの足跡があったが、熊の足跡はまだなかった。でもこの陽気だとそろそろ冬眠から目覚めても不思議ではない。

 谷筋は杉の植林。しかし斜面を上がるとすぐに自然林に戻る。ここも北向きの尾根を登ったので軟雪が重い。1340m鞍部に出て北上、最初はなだらかなブナ林だったが尾根の傾斜がきつくなると東側が切れ落ちて雪庇が発達している。雪庇の先端は崩壊の危険があるので根元の樹林帯との境界を進む。雪が少ない場所では地面が見えていたが、思ったよりも藪が薄そうだった。尾根の西側直下は背の低い潅木が生えていたが隙間が多く藪漕ぎは不要だった。

 雪庇を登りきると苛窪山山頂。おそらく木のある場所が本当の山頂だろうが、今は東に突き出た雪庇が最高点。西側は樹林で視界が遮られるが東側は障害物なし。これから向かう大平山方向も良く見える。先週登った鍋山や鎌房山も見分けることができた。ここでも休憩。日差しが暑く日陰で休みたいくらいだった。

 時間と体力の都合でここで終了して保城峠経由で下山という選択肢もあったが、まだまだどちらも問題ないので先に進むことにする。1518.2m峰までの尾根は概ね広く緩やかで歩きやすかった。ここもブナが中心だが途中でブナがほとんど見られなくなりアスナロ、五葉松など常緑樹が多い場所もあった。ここのアスナロは幼木藪を構成するような密集して背の低いものではなく、幹の太さが一抱えもあるような立派な物が多い。ただし太さの割に背の高さは低く、気象の厳しさが感じられた。そんな中に1本の枯れたアスナロがあり、あちこちに伸びた太い枝の切り口が平らになっていて、人工的に切られたとしか思えなかった。ブナが少ないのは一度伐採されたからかもしれない。

 この尾根にもたくさんのカモシカの足跡がついていて、遠めに見ると人間の足跡のようにも見える。古い足跡は雪解けで穴が広がって大きく見えるのだ。足跡の横の木の皮が食べられた形跡があり、こんな雪深い山の中で冬眠しないカモシカが冬を越すのも大変だろう。

 1518.2m峰はてっぺんを通らずに東側を巻いてしまう。もったいない気もするがこの積雪量では三角点発見は不可能だろう。旧町村界尾根に戻るとワカン跡が登場。ということはすれ違いの主はもっと東、少なくともスキー場、場合によってはもっと先からやってきたのは確実だ。これは今朝出発したとは考えにくく、どこかで幕営したとしか思えない。DJFのように夜中から歩く人もいるが、それは例外で滅多に存在しない。

 あとは稜線を辿るだけ。雪が柔らかい場所は有難くトレースを使わせてもらい、そうでない場所はできるだけ左右方向の傾斜がない尾根直上を進んだ。スノーシューの方が接地面積が大きいので、トラバースのような横方向の傾斜がある場所ではワカンよりも足への負担が大きいからだ。同様の理由で1528m峰や1602m峰は巻かずに直登だ。雪質がよければアイゼンに切り替えてより傾斜の緩やかな北側を巻くのだが、今の雪質ではラッセルの方がきついだろう。素直に尾根上のアップダウンを越えた方が良さそうだと判断した。

 1518.2m峰南東側の1490m肩には露岩があり、尾根の北側を少し外して下っていく。先人の足跡がくっきりと残っているが、それがある場所は左斜めに傾いた斜面でスノーシューでは歩きにくいので私は尾根直上を進んだ。

 鞍部から1528m峰への登り返し。ここも明るいブナ林がメインだ。ピークに立って広い斜面を1460m鞍部へとスノーシューを滑らせながら下っていった。

 次の1540m峰は偽ピークでその先の1543m峰が大平山山頂となっている。しかし現場で見ると高さは分からないが1540m峰の方が山頂らしい明瞭なピークなのに対して1543m峰は平坦で山頂らしくない場所だった。足跡の主は1543m峰の正確な山頂は通らずに僅かに北を巻いていたが、高さの差は1mもないだろうから山頂に登ったと表現してもいいくらいだろう。気にせず歩いていると通過してしまうような、そんな目立たない場所だった。これまでの山頂と同様に周囲には標識、目印は皆無だった。ここでも充分に休憩を取った。

 この先の登りは1602m峰と1368m峰の2つでほぼ完了で累積標高差は約250m。登りにかかる時間は1時間もないだろう。時間も体力もまだいけるので丸山を目指そう。

 緩やかな尾根を下って1490m鞍部からだだっ広く尾根に見えない斜面を登っていく。登りはいいがガス等で視界が制限された場合の下りはイヤらしい場所だ。足跡の主はこの好天の中で今朝歩いたのでピークから鞍部へと直線的に下っていた。

 1602m峰の東側は雪庇ができかけていて、傾斜が緩い場所から斜面を下る。ここは立ち木がなく山スキー向きの斜面だがスキー跡はなく先人のワカン跡が一直線に伸びているのみ。なかなかいい傾斜で緩んだ雪でスノーシューを滑らせながらあっと今に下ってしまう。無雪期ではこんな芸当は不可能だ。

 1480m鞍部には幕営跡を発見。ワカン跡の主は今朝ここから出発したようだ。そうならばあの時間で黒岩山付近まで達したことも頷ける。しかしまあ、こんなところで幕営縦走とは自分が言うのもなんだが物好きに違いない。いったいどこから入山したのだろうか? やはりスキー場か? そしてどこから降りるのだろうか。下山コースは知る由も無いが、どこからやってきたかはこの先のトレースを見れば想像できるだろう。

 1638m峰への登りが本日最後のまとまった登り。まだ時間はあるので急がずゆっくりと登っていく。高度が上がるとそれまで見られなかったシラビソが混じるようになり、高度が上がったことを感じさせてくれた。

 そして1638m峰に到着寸前にスキー客が休憩しているのがチラホラ見え始めた。今日は藪漕ぎに備えてボロいTシャツなので長袖シャツを引っ掛けてからピークに出た。

 1638m峰は山頂西側にリフト山頂駅があり、山頂一帯はスキーのトレースで埋め尽くされていた。これまでの尾根では人の気配は皆無だったがここは完全にリゾート地。まさに別世界。そしてスキーやボードではなくスノーシューを履いてピッケルを手に持ったTシャツ姿もまさに別世界の姿(笑)。完全に浮いているが、頂上は人があふれているわけではなく、グループごとに点々バラバラに広範囲に散らばって休んでいるのでそれほど近くを通ることもなかったのは幸いだった。すぐ東には七ヶ岳。簡単に往復できそうな近さであるが、もう登った山なので今回はパス。七ヶ岳に続く尾根上にはトレースは見られなかった。

 ここまで来れば丸山は近い。一段下がった場所にある肩のように見える細長いピークがそうだろう。このまま尾根どおしに行こう。スキーのゲレンデは尾根の西側直下に付いているのですぐにスキー客とはお別れ。尾根上には少ないながらスキーのトレースがあったが、電波塔を過ぎて下りが本格的になると消えていたのでコースに戻ったようだ。そして驚いたことにワカンの主の足跡はまだ南へと続いていた。少なくとも丸山は越えてきたようで、ヘタをすると会津高原駅から中山峠経由で登ってきた可能性さえ出てきた。

 この尾根は東が急激に落ち込んでうねった雪庇が発達しているが、雪解けが進んで崩壊しそうなので根元の樹林帯との境界を歩いたが、雪解けで地面が顔を出した区画では明らかに藪が刈られた夏道があった。地形図上では1602m峰から中山峠まで破線が描かれているが、少なくとも中山峠には夏道入口は無かったのは現地で確認済みなので道があるとは考えもしなかったが、全くの嘘でもないようだ。ただし、道が確認できたのは鞍部までの間で、丸山への登りにかかると積雪で無雪期の状況は不明になった。

 僅かに笹が顔を出した尾根を登ると南北に細長く平坦な丸山山頂だ。ここも雪庇に覆われて本来の地面より2,3mは高くなっているだろうか。東側は遅くまで残るであろう雪庇の影響だろうか、立ち木が無く展望がいい。雪庇の風下側に半分埋もれた立ち木が山頂に一番近そうなので、そこにテープを残した。ここは夏道があるのかどうか。雪庇の影に隠れて西寄りの僅かな風を避けながら休憩した。

 時間的にはこの辺で切り上げないと明るい時間帯に車に戻れなくなりそうだが、ここまで来て三角山に登らないのはもったいないと思えた。三角山に登らず丸山から下るとゲレンデ付近を通ることになって興ざめだし、三角山から中山峠に下りれば雪に埋もれた林道歩きと、その後は除雪された車道歩きだから暗くなっても問題なく歩けるだろう。

 三角山に向かうことにしたが、問題は南側の超急傾斜な尾根。ここだけはスノーシューを脱いでアイゼンが必要かもしれない。ワカンの足跡はまだ南に向かっていたが、これから下りが始まるという肩の部分より先はアイゼンの足跡に変わっていた。予想通りそういう斜面らしい。とりあえず行けるところまでスノーシューのまま行ってみることにした。

 傾斜がきつくなると足跡は西の方に逃げていた。見下ろす斜面は確かにそちらの方が傾斜が緩いので納得。緩いといっても既にスノーシューで直線的に下るのは危険な斜度になっており、斜めに下っていく。しかしその先、雪が溶けて地面が出た斜面はいっそうの急斜面で、その左右の雪の付いた斜面も同じような斜度。ここはスノーシューで突っ込むのは無謀なので外してザックにくくり付け、雪が消えた微小尾根を下った。雪が無いのでアイゼンは使わない。まだ地面は凍っているようで落ち葉の下はよく滑ったが、立ち木に掴まりながら慎重に下っていく。見上げると登りたくないようなえらい角度で斜面が立ち上がっていた。

 傾斜が緩んで安全地帯になると積雪が復活。再びスノーシューを装着して地形図を確認、本来の尾根へ向けて斜面をトラバース気味に下っていく。このとき左足のスノーシューに違和感が。ビンディングが緩んできたのかと気にとめずに歩きつづけた。

 尾根に復帰したが1380m付近で南に分岐する尾根に引き込まれそうになるが、真っ白な沼の平の見える方向がずっと左になったためルートミスに気付いた。ここで地形図を確認しようと左のポケットに手を突っ込んだが無い! 右側のポケットにも無い! さっきスノーシューを履いたときにはあったので、あの間のどこかで落としたらしい。ここまで下るのに軟雪で滑って何度かコケているがそのときかもしれない。正しい尾根との分岐まで登り返しながら探したが見当たらない。まだ登り返して探してもいいが、それなりの斜度の連続で残雪の上を滑り落ちて見つからない可能性も大いにあるし、三角山の緯度経度はGPSに入力済みで、三角山から中山峠までのルートも頭に入っている。峠に出てしまえばあとは林道歩きなので、地図が無くても大丈夫だろうとの考えもあった。しかし、これがまさかトラブルの原因になるとは。それも下界に下りてから。

 一度登り返して正しい尾根に乗り直し、落葉したブナの間から見える真っ白な沼の平を目印にして、尾根末端に到着する前に右手に針路変更。平坦地に出て沼の平を左に見ながら進んでいくと大きく立派な小屋が登場。プロパンガスのボンベまであり、どう見ても現役の小屋だ。ということはここまで山道があるはず。でも中山峠では笹藪ばかりでそれらしき入口は無かったが、どこが起点だろうか? ここでワカンの足跡に再開した。

 この平坦地の歩きで左足のスノーシューの挙動が本格的におかしくなった。ビンディングと本体の固定が緩んでグラグラしていた。調べてみると両者を接続するステンレス製?の金具が2箇所で破断していた。同時に2箇所が壊れたとは考えにくく、まず1箇所目が壊れて応力が集中した2箇所目が壊れたのだろう。これでは使えない。無理に使うとジュラルミン製のフレームまで曲がってしまう。そうなると修理代がかなり高くなりそうだ。しょうがないので左足のスノーシューをザックにくくりつけて片足スノーシューという変則的な歩きになってしまった。既に日は傾きかけて気温が下がっている影響もあってつぼ足の沈み込みは数cm程度であり許容範囲だ。

 先人のワカン跡は三角山には立ち寄らず、1261m峰を越えて三角山の1200m肩で南西を巻いていたが、こちらは三角山山頂を目指す。尾根が立ち上がると雪が消えて地面が出ているが藪が無い。あれ? 林道周辺とはかなり様子が異なる。もしかしたらこれなら無雪期に登った方が良かったかなぁ。尾根上には境界標石も見られた。樹林が覆う尾根を登りきると山頂部分のみ残雪が登場。狭い範囲で上空のみ開けた場所だった。標識は無かったが、蝉山で見たのと同様な五円玉が結び付けられた古いリボンがあった。

 これで本日目標としていた山は全てクリアできた。残るは長い林道&車道歩きだ。西へ下って雪原に戻り、平坦地を南西へ向かうとワカン跡あり。この主は確実に中山峠を経由しているだろうから、地図が無くても足跡を目印に進んでいけばいい。どんなルートを通っても南に向かえば必ず林道と交差するので、細かなことは気にしなくていい。右足のみスノーシューだと歩きにくいが、両足が雪に沈むよりはマシだろう。

 時々雪が少なくなって笹が出ているところがあったが、背の高い笹でははく膝丈くらいのミヤコザサ?であり無雪期でも支障なく歩けそうだった。立ち木には赤ペイントも見られたので、もしかしたら小屋までの道か踏跡くらいはあるのだろう。でも中山峠は笹藪に覆われていたような記憶しかないなぁ。

 やがて中山峠に到着。林道は除雪されているはずもなく真っ白だが、多数のスノーモービル跡があった。これなら林道上は雪が締まって歩きやすそうで大助かり。そのとおりでスノーモービルの跡はつぼ足でもほとんど沈まず、スノーシューを脱いだ方が足が軽くなりそうなので右足の正常なスノーシューもザックの裏側に移動した。なお、これまでお世話になったワカン跡は林道上には付いておらず、おそらくこの主は会津高原駅からやってきたと推測される。

 長くつまらない林道歩きだが、これでもう安全圏だとこのときは考えていた。既に日は傾きかけていて、おそらく林道終点到着時には暗くなってしまうだろうが、道無き尾根とは違って林道と車道歩きならライトの光で歩いても大丈夫だろう。まだまだ先は長いので急がずゆっくりと下っていった。林道はほぼ雪に覆われるが、ごくまれに斜面から流れ込んだ雪解け水で路面の雪が部分的に消えて路面が出ているところがあったが、スノーモービルはそんなろこともお構いなしで通っていた。アスファルトの上を走っても大丈夫なのだろうか?

 やがて林道が分岐し現在位置の確認に最適なポイントなのだが、地形図が無いので確認のしようがない。幸い、下りの林道はこのまま直進。周囲が薄暗くなった頃にスノーモービル跡が林道から右に外れて斜面を登っていた。あれ、林道終点から入ったのではなかったのか。この先の林道は1,2人の足跡があるだけで軟雪に変わる。おそらくスノーモービルはスキー場駐車場付近から入ったと考えられるので、そちらから車道に出てもいいのだが、どれくらい登らされるのか地形図が無いので分からない。たぶん林道終点は近いだろうとこのまま林道を歩くことにした。

 ラッセルを避けて先人の足跡に足を合わせて進んでいくが、やがて足跡は林道から左に逃げてしまった。これは想定外だ。足首まで沈む雪の上を歩いて林道終点を目指す。既に周囲は暗闇に閉ざされてしまった。

 GPSを見ると電池切れサインが出ていたので予備電池に交換したが、持ってきたのが充電していない電池だったようで、最初から電池切れサインが出ていた。これは痛恨のミスだ。GPSの軌跡が途中で途切れてしまうな・・・と考えたが、この程度の被害なら大したことはない。この後、地形図紛失とGPSの電池切れが重大な結果をもたらすことになる。

 地形図が無いのでどこで北側の車道に合流するのか分からないが、平坦な道を西にまっすぐ進むだけでいっこうに車道に出る気配が無い。北側には小さな尾根があるようで北側には明かりは全く見えない。標高は850mを切ってなおも緩やかに下っていく。記憶では車を置いた場所の標高は約900mで、これ以上下ると登り返す必要がある。

 林道のカーブで見切りをつけて北に進むことにした。地形図が無いのでこの先の地形がどうなっているのかわからないが、とにかく北に行けばスキー場へ通じる車道に出るのは間違いない。

 緩やかな南斜面だが雪の締まりは林道と同程度で足首くらいまで常に潜り、たまに膝くらいまで踏み抜くことがある。緩やかな斜面を上ると小尾根を越え、きっとこの先に車道があるだろうと思ったら真っ暗闇のまま。それどころか下から沢の水音が聞こえる。げげ、途中に沢があるとは思わなかった。はたしてこれを渡れるだろうか。北に向かうにはこの沢を越えなくてはならない。

 雪に覆われた斜面を下り沢の様子をライトで照らしてみると、水量はそれほどでもないが両岸とも積雪で2mくらいの壁になっていて降りるのも登るのも難しそうだ。スノーブリッジがないか上流側に移動すると崩れそうな頼りないものが多かったが、1箇所だけ倒木の上に雪が積もった個所があり、そこを伝わって対岸に渡った。

 対岸は急斜面で、雪が緩んで腿まで踏み抜きながら登って小尾根に上がると明かりが見えた! しかも道路の案内標識だ! これがスキー場への道に間違いない。やっとこれで車までたどり着けると安心したのだが、この後に大きな落とし穴が待っているとは考えもしなかった。

 1mほどの雪壁を飛び降りて広い道路へ降り立つ。真っ暗闇の中をピッケルを横に刺し背面にはスノーシューがくっついたザックを背負って歩く姿は場違いだろうな。もうここは山の中ではなく里だ。

 ゴルフ場まで車で行く途中で見た看板類がしっかりと出てきてさらに安心度が高まる。スキー場入口を見送ってゴルフ場の案内看板が出てきたところで左に曲がるのだが、ここで大きな間違いをしてしまった。往路でも気付かなかったのだがここは三叉路になっていて、車を運転しているときに入ったのはほぼ直角に左に曲がる道だったのを、帰りは鋭角に左に曲がる道に入ってしまったのだ。これらの道の間は雪壁が残っていて、夜間は注意しないと三叉路とは気付かないのだった。地形図があればこんな間違いを犯すことはないのだが・・・・。

 除雪された広い道をルンルン気分で進んでいくが、昨夜よりも路上の雪が減っているのが分かった。ただ、今日は好天で気温が高かったたので溶けて消えたのだろうとしか考えなかった。そのまま進んでいくと突然除雪終点! これはあり得ない展開だ。往路は除雪された道がずっと続いていたのに。となると、あの曲がった角は往路とは全く別の場所だったのではないか。記憶では保城川沿いの林道が分岐する広い道はループ状になっていて、私がアプローチしたのはループの東側からだったが、今は西側から入ろうとしているのではないかと推測した。確かにループ状になっているのだが、西側の実際の入口はずっと西側にあったのは帰宅後に知ったことだ。

 周囲は立ち木のない開けた雪原で、もうゴルフ場内に入ったのだと考えて開けた平原を進むことにしたが、気が付いてみると除雪された道路に沿って逆方向に歩いていた! 周囲は真っ暗で、近くに見える山々から方向を知ることができないことと、方位磁石で確認しなかったことが大きな原因だ。

 車はここより北にあるのは確実なので方位磁石を取り出して北に進路を取る。小尾根があって再びの登り。越えるとまた開けた雪原が登場し、東西方向にはスノーモービル跡や埋もれた車道を示す看板やポールが見えるが周囲に明かりはない。なおも北に進むと再び斜面が登場。疲れた足に登りはきつい。

 帰ってからGPSの軌跡を確認して分かったことだが、北に進んでいるつもりが徐々に東へと針路変更していたことが分かった。真っ暗闇だと目印が無いので方向感覚を失って直線的に進むのは難しいようだ。しかしそのおかげで除雪された道路に出た! しかし現在位置がわからない。たぶんこの付近で除雪された道は往路で車で通過した道くらいしかなさそうだ。雪壁の高さは2mくらいあるので低くなった場所が登場するまで壁沿いに進んで、最後は道路に飛び降りた。

 道路を進むとT字路で太い道に合流。ここは記憶がある。左に曲がったはずだ。しかし、帰ってからGPSの軌跡を確認したところ、私の記憶に残っていないT字路がもう一つ存在し、そこは八木ノ岐川を渡ったすぐにあるT字路。このT字路をここより東にあるT字路と誤認してしまったのだ。これも地形図があれば川が近くにあるので間違えることはないのだが。それに人間は自分の都合のいいように状況を解釈してしまうのが常なのだ。このミスが最後の分かれ道となった。

 除雪された広い道をどんどん進んでいくと右手にはゴルフ場のフェンスが登場し、明らかにゴルフ場に入ったことが分かって安心。しかしなかなかたどり着かない。凍った路面でコケそうになることもしばしばで、周囲の光景よりも足元に注意が行く。とはいっても真っ暗だし両側とも雪壁で現在位置の参考になる視覚情報に乏しかった。

 突然T字路が登場、あれ、車を運転しているときにこんな場所はあったかなぁ。ここでちょっと不安になる。高度計を確認すると標高800mを切っている。こんなに低いはずがないのだが、これもご都合主義で最後に校正してから数時間が経過しているし、気温も下がって誤差が増えているのだろうとしか考えなかった。この時点で客観的に状況判断できれば良かったのだが・・・

 なおも進むと突如として除雪終点が! ここで完全に道を間違ったことが確定した。しかし現在位置が全くわからない。ただ言えることは、車を置いた場所は北側から尾根が張り出した縁であり、ここはまだ平坦地。北に向かえば必ず往路に通った道に出るか尾根の縁に出られると考えた。尾根の縁にはスノーモービル跡がある雪に埋もれた広い道があるし、黒い融雪材が撒かれたゴルフコース(といってもタダの雪原)があるので、現場に行けばおおよその現在位置がわかるはずだ。

 その前に電池切れのGPSを試してみることにした。長時間は電源は持たないが短時間なら入るかもしれない。私のGPSは地図表示機能は無いが、往路のトラックログを地図のように画面上に点線で表示することができる。ただし、まっさらな画面上に破線が出るだけ。でも現在地からの方位とおおよその距離は掴める。祈るように電源を入れると最初から電池切れ警告が表示されるが電源は落ちない。僅かな時間で衛星を捉えてトラックログ画面を呼び出して縮尺を広範囲に広げると出発地は北東方向だった。え、ここより東? これにはちょっと驚き疑問にも感じたが、まだ北に移動するのは納得できるので、湯北に向かっている雪に埋もれた車道の続きを歩いた。もちろん、GPSはすぐに電源を切った。まだ登場の機会があるだろうから電池は無駄にできない。

 車道はスノーモービル跡が続いていて、途中から重機のキャタピラ跡が登場すると同時に、右手に黒い融雪材が撒かれたゴルフコースが登場、間違いないゴルフ場敷地内に入ったようだ。再びGPSの電源を入れると出発地は東北東。北上した分だけ東方向が強くなった。ゴルフコースもあることだしこの辺で東へ向かった方がいいと判断し、車道を外れて右手(東)のゴルフコースへ。融雪材を撒くために重機であちこち走行したキャタピラ跡が縦横無尽に残っている。

 東へ向かうと行く手には深い沢が登場。割と大きな沢で暗くて底が見えないくらいで簡単に渡れる雰囲気ではない。でも私が車を止めたのはたぶんクラブハウスがある場所だろうから、そこからゴルフコースへ続く道があるはずである。どこかで橋があるはずだと進んでいくと砂防ダム堰堤が登場。これで対岸に渡れるかと思ったら普通の砂防ダムと同じで中央部が低くなって水がその上を流れる構造なので渡るのは無理。さらに上流に進むと今度こそ鉄製の立派な橋を発見! 橋の上には1m以上の雪が積もって手すりより高いが幅があるので怖さは感じない。

 対岸に渡ってGPSの電源を入れるとほぼ真東に300m程度で往路に通ったルートと重なるはず。そこはゴルフコース内で西から北に進路を振った場所だ。このままゴルフコース内と歩くのかと思ったら樹林に覆われた小尾根が登場、また登りか。長時間歩きつづけた疲れた足には少しの登りでも堪える。

 斜面を登ると上部に道路を除雪した雪を押し出した痕跡があった! その先には道路があるはずだ。デブリのような雪のブロックを乗り越えると予想通り除雪された舗装道路が登場! 助かった!!

 今度こそ間違い無く記憶にある風景で、私が車を置いた場所よりもさらに西に進んだ場所で、ここは除雪幅が狭く周囲から雪のブロックが路面に落ちていて、日中に雪が緩んで大規模に雪壁が崩れたら車で出られなくなるのでゴルフ場入口までバックして戻った個所だ。記憶どおりの上り坂を登りきると除雪幅が広がってマイカー発見!! いや〜、山から下りてからが長かった。時刻はもうすぐPM9時になろうとしていた。

 ザック等を収納してエンジンをかけて暖を取りながら着替えをすると靴下はびしょ濡れ。もうこのゴア靴の防水はダメだな。温度が低くて雪が溶けなかった時期は大丈夫だったが、これからの本格的な残雪期にはもう無理だろう。来週からは新しい登山靴に変更するか。

 明日は近くの別の山に登る予定だったが、これだけ体力を使った後ではもう無理。それにスノーシューは破損して使えないし、ワカンはまだ車に積んでいない。今週はこれでおしまいにして帰ることにした。路面上の昼間の雪解け水は凍って路面はツルツルになっていた。

 振り返ると地形図を途中で落としたのが山を降りてからの長時間ワンデリングの主要因。山だと尾根や沢を頼りに進むことも可能だが、下界ではそれは無理。ましてや夜間で周囲の地形が見えないのは痛かった。七ヶ岳から黒岩山の稜線が見えていればこんなことにはならなかっただろう。これからは予備の地図を持っていくようにするかな。

 またGPSの予備電池として充電していない電池を持ってきたのも失敗要因。地図表示機能が無くてもトラックログ画面で出発地点の方向とおおよその距離が分かるので、簡易型のナビゲーションとして使えることが良く分かった。今回はGPSが全く使えなかったら無事車に戻れたかどうか。あれほど西に行き過ぎていたとは考えもしなかった。

 下界でのワンデリングはこれで2回目。あのときも最後はGPSで助かった。やはり今の時代は最後の最後はGPSが頼りになる。GPSを購入するなら画面が付いてなかったり、画面があっても簡単な文字表示の機種ではなく、地図表示ができない安価なタイプでもグラフィックな画面を持った機種にした方が絶対にいい。まあ、それ以前に今はスマホが主流かな。
 

 

都道府県別2000m未満山行記録リストに戻る

 

2000m未満山行記録リストに戻る

 

ホームページトップに戻る